第1回の講演内容
泌尿器科医 米田先生のお話をまとめてみました。。。。
T.問題なく”排泄”ができるとは?
排泄は次に示すような意識や動作の組み合わせでできています。
この中の一つでもうまくいかないと排泄に問題が生じます。
@尿意・便意を感じる
Aトイレや便器が認識できる
Bトイレまで行き、ドアを開閉する
C衣類(下着)をおろす
D便器を整え、上手に便器を使う
E排尿・排便をする
F後始末...おしりを拭いたり、トイレの水を流す
G衣服を着る
Hベットや部屋に戻る
U.排尿のしくみ
・尿は腎臓で作られ、尿管を通って、膀胱にためられ、尿道から体外に排出されます。
・膀胱に約150〜200mlの尿がたまると尿意を感じますが、我慢できます。
300〜400mlたまると尿意が強くなり、我慢が出来なくなりトイレにいきます。
それまで膀胱はのび、尿道はしまっています。排尿の準備が整ったところで、
それまで我慢を命じていた大脳からの指示が排尿に切り替わり、尿がでます。
この時、膀胱は縮み、尿道は開きます。膀胱が空になったところで膀胱は縮むのをやめ、
尿道は閉まり、再びためる状態に戻ります。
・男性の尿道は長く、膀胱の出口に前立腺があるので高齢になって前立腺は肥大すると
尿が出にくくなります。女性の尿道は短いので漏れやすい構造です。
V.正常な排尿とは ・一回の量:200mlから500ml程度
・排尿の時間:10秒から30秒程度
・出方:途中でとまることなく、切れよく終わる
・色:薄い黄色から透明
・混合物:無し
・臭い:食物や飲み物、薬の影響で多少の臭いはあってもさしつかえない
悪臭があれば感染の可能性がある
・その他:痛みなどは無い
行きたくなってから1時間程度は我慢できる
特に出したくなくても出せる
W.排尿障害とは
尿をためたり、出すことに問題がある場合、これを排尿障害と呼びます。排尿障害には次のような症状があります。
<尿失禁>
尿が我慢できなかったり、知らないうちに出てしまい、問題になることです。
<排尿困難>
尿が出にくい状態です。1回の排尿に50秒以上かかったり、途中で止まってしまう、
力んで排尿する、まだ尿が残っているという状態です。
<頻尿>
「オシッコが近い」と表現される状態で、排尿の回数が日中10回以上、
夜間3回以上あることを頻尿といいます。
X.排尿日誌
排尿日誌とは排尿の時刻、一回毎の排尿量、一回毎の飲水量、尿漏れの時刻と状況を
朝から翌日の朝まで記録したものです。これを3日間続けて記録すると、
自分がいつ、どのくらい1回に尿を出すことができるか、どのようなときに漏れているのか、
飲む量とのバランスは良いかなどの排尿・水分の取り方のパターンを知ることができます。
Y.尿が出にくい
一回の排尿に50秒以上かかったり、尿の切れが悪い、途中で止まる、
お腹に力を入れて出すなどの症状を排尿困難といいます。
男性に多い症状ですが、女性にもみられます。
排尿困難の原因
1)膀胱の縮む力が弱い:子宮癌・神経疾患など
2)膀胱の出口や尿道に閉塞がある:前立腺肥大症・尿道狭窄など
★ 排尿困難が生じると上記の症状の他に、膀胱の中に尿が残ってしまう残尿があり、
その結果膀胱炎にかかりやすくなったり、腎臓に悪い影響を与えたりしますので、
まずは泌尿器科医の診断を受けましょう。
Z.尿が近い 日中10回以上、夜間3回以上トイレに行く頻尿には次のような原因があります。
その原因をつかんで対応することが大切です。
1)尿量が多い
・水分を1日に3リットル以上も飲んでいる場合、または利尿作用の多いアルコールや
カフェインの影響も考えられます。少し水分を控えます。
・利尿剤を飲んでいる場合はどうしても多尿になります。
困る場合は主治医に相談してください。
・夜だけ尿量が増えることがあります。むくみがあったり、腎臓の働きが落ちていると
起こることもありますから、医師に相談しましょう。
2)膀胱が小さい
・200ml以下しかためられないとトイレが近くなります。トイレに行くのを
少し我慢する訓練を行います。膀胱が過敏になっている場合は薬が有効です。
3)尿が出来きっていない(残尿がある)
・膀胱の中に大量の尿が残ると(残尿)、頻尿になります。残尿感とは別のものです。
尿量は実際に測らないとわからないので、泌尿器科を受診しましょう。
4)気持ちの影響
・何かに夢中になったり、寝ている間は気にならないけれど、外出したり、緊張すると
トイレに行きたくなる場合は気持ちの影響が考えられます。
気持ちによって起こることをよく理解して、我慢する訓練をします。
どうしても治らない場合は専門家へ受診しましょう。
[.尿失禁
自分の意志に反して、あるいは知らないうちに尿が漏れてしまい、
これが問題になる状態を『失禁』といいます。
1)腹圧性尿失禁
咳やくしゃみなどお腹に力がかかった時に尿が漏れるタイプです。
尿の出口にある尿道をしめる筋肉が弱くなっているために起こります。
2)切迫性尿失禁
強い尿意を感じて我慢できずに漏れてしまうタイプです。
膀胱に少ししか尿が貯まっていないのに、膀胱が勝手に縮んでしまいます。
3)溢流性尿失禁
尿が出にくいのに、漏れてしまうタイプです。
出し切れない尿(残尿)が少しづつ溢れるタイプです。
4)機能性尿失禁
トイレがわからない、あるいは歩けないためにトイレまで行けないといったように、
排泄に関係する判断や動作がうまうできなくて漏れるタイプです。
★これらのタイプが重なっている場合もあります