
第1回の講演内容
四日市社会保険病院外科部長 梅枝先生のお話をまとめてみました
今日は排便のしくみについて勉強しましょう
大便はだれでもしますが、なかなか話題にしたくないものです。しかし、動物はみんなうんちをします。
うんちは食べ物を吸収して残しておけないごみです。そして身体からの便りです。
体からの便りそれが大便です。うんちの便りを読むと臓器の異常がわかります。
くらしのモニター(評論家)です。生活のリズムがうんちをつくります。
うんちはどうやってつくられるのか?
口から入った食べ物は、食道、胃、小腸、大腸を通り、肛門から出されます。唾液、胃液、膵液、胆汁、腸液、といろいろな消化液が作用します。だいたい1日から2日で便としてでてきます。
ひどい便秘の人は1週間以上かかります。自律神経の働きでうんちが作られます。
うんちの量は大人一日200から300g(バナナ2本分)です。うんちの80%は水分で、
70%以下は便秘、90%以上は下痢です。うんちの出来栄えは繊維できまります。
数パーセントは腸の粘膜です。うんち1gに数億個の細菌がいます。
うんちは衣を着ています。
粘液は、消化管からでる、透明ですこしどろりとしたゼリー状(唾液や腸、肛門の粘液)のものです。
消化管の表面と、うんちの表面に薄くくっつきます。
ばい菌や毒物などが体の中に入ってくるのを防ぎます。
食べ物が、腸を通り、肛門から出るまでのすべりをよくします。酵素活性が大きな働きをしています。
おならの量、におい
おならは1発が約100mlで、日に約5発500mlが普通です。人によっては100〜3000mlの差があります。食べるとき空気を飲み込むとおならの量も変わります。水素ガス、炭酸ガス、メタンガス、アンモニア、硫化水素、インドール、スカトールなどがあります。肉を多く摂るとおならは臭くなります。
理想のよいうんち
うんちは食べたものと、体の働きによって作られます。良いうんちは良い食事、体調、それを取り巻く
よい生活により作られます。良いうんちの量はバナナ3本分。良いうんちはあっさりとした便ぎれ。
良いうんちは練り歯磨きのかたさ。よいうんちはゆっくりと水に沈む。
間違った良いうんちとは?
メキメキと出る硬くて太いうんち→便秘。うさぎの糞のようなポロポロしているうんち→便秘。
解決法は、よく噛んで唾液と混ぜること(唾液は良質な繊維です)。飲み込みはダメ。歯が悪くてもダメ。
便秘・下剤を直すよりまず食べ方を直すことが必要です。
変わったうんち(体からの便り)
黒褐色:肉、卵、チョコレートの食べ過ぎか、出血。
暗黒食:便秘か、出血(胃十二指腸潰瘍など)。
鮮血色:痔の出血か、直腸からの出血。
灰色:胆汁の減少(胆石か膵臓の病気)。
緑色:細菌の具合で酸化された場合。
白色:バリウム便検査後。
今までと違った感じの出血の場合は、迷わず医師(肛門科専門医)の相談ください。
排便の順序としくみについて
うんちの控え室はS状結腸です。肛門の奥はやや太い直腸です。ふだんは何も入っていないのでぺしゃんこです。大腸で作られたうんちはここに引っかかっています。排便は自律神経を刺激することから始まります。食事が始まると、胃が活発に働き、自律神経を刺激します。大腸が働いて、うんちを直腸に送り込みます。胃大腸反射といいます。
排便の極意(送り出し)
便意を感じることが、つぎのステップです。直腸にうんちが来て初めてうんちが来たと感じます。
これを便意(出せ出せコール)といいます。タイミングの取り方で、排便のうまい下手がきまります。
便意にあわせて、うんちをスルリと出す。力自慢は、百害あって一利なし。
押し出しではなく、タイミングをつかむこと。送り出しの技こそが、うんちの出し方の極意です。
力はタイミングです。便意を感じたときが送り出しのタイミングです。
便意がない時、弱いときどうするの?
その1:うんち、排尿、おならの順で。
その2:便意を感じるまで、排便するのを待つ。
その3:S状結腸のマッサージ。
その4:おなかを『の』の字にマッサージする。
その5:体をねじる運動。
その6:自律神経を刺激する。背中や腰に蒸しタオル、足の裏をもむ、など。
その7:ツボの刺激、経穴、神門、百会、など。
その8:朝起きねに、コップ一杯の水を飲む。以上を条件反射になるまで根気よく続ける。
良いうんちを上手に出すための時間割
朝の時間割(一例)。
6時30分:規則正しく起きることが肝心。
6時35分:コップ一杯の水を飲む。そして運動する。
7時15分:ゆっくりおいしく食べる、繊維をよくとり、よく噛み、唾液を出すことが肝心。
7時30分:食後は20分以内に歯磨きを!
7時45分:朝食後30分〜60分で自律神経が働き始めます。便意を高めながらトイレに行く、
タイミングを測り、軽く息んで、スルーリと出す。
5分以内が理想的。
7時50分:排便後は10分くらいは、おなかに力をいれない。
8時00分:いってきまーす。
便秘になるとどうなるの?
お腹がはる、食欲が減る。食べ物の味がわからなくなる。神経がいらいらする。怒りっぽくなる。
肩や背中が凝りやすくなる。勉強仕事に集中できない。頭がボーツとして、重くなり、眠くなる。
体のニオイ、吐く息、オナラも臭くなる→本人は気づかない。
肌荒れ、吹き出物、化粧の乗りも悪くなる。
女性の便秘の特殊性
女性には便秘が多い。エストロゲンや黄体ホルモンが周期的に分泌される。
ホルモンは腸の働きを悪くする。妊娠時、黄体ホルモンは引き続き分泌される。妊娠4ヶ月まで便秘が続く。妊娠8ヶ月から、水泳、散歩、軽い運動がよい。産後は、骨盤の筋肉がゆるみ、排便しにくくなる。
直腸のカーブが変化する。下半身の血液循環を良くする。腰や手足を冷やさないように。
締め付ける下着はだめ、たばこ、ミニスカートはだめ。
私はどうして便秘になったのでしょう?
その1:うんちの原料の食事や水の量が少なすぎませんか?便のかさ(ボリューム)がないと
腸は働きません。
その2:食べ物の質も問題です。(食物繊維は、野菜、果物)
その3:出すタイミング、我慢はいけません。余裕をもっていますか。
その4:ストレスが大敵。緊張すると腸に波が伝わらず、便秘になる。
その5:運動不足はないでしょうか?リラックスして。
その6:下剤に頼っていませんか?刺激性下剤の長期使用はダメ。
その7:その他に薬を飲んでいませんか?薬は腸の働きを変えます。
その8:痔は悪くありませんか?痛みがあると、便秘になる。
その9:その他に、病気はありませんか?
便秘と成人病との関わりについて
ガンについて:便秘に人は、統計上、肥満とがんになりやすい。大腸ガンや乳ガンが多い。
脳卒中・心臓病について:高血圧の人が、寒いところで力んで便を出すと血圧が変動し、脳や心臓の血管
が切れたり詰まったりする。脳卒中、心臓病のひきがねになる。
胃大腸反射について
1:まず梅干しを考えると唾液がでる。
2:食事をすると胃・小腸が動き出す。
3:小腸から大腸へすすむ。
4:S状結腸から直腸へ進む。
5:便がしたくなる。この一連のものを胃大腸反射という。
下痢について おなかが冷えると下痢する。酵素は温度に敏感で、消化不良になる。
消化酵素が足らないと下痢をする。牛乳、油っこいもの、腸炎、細菌性、ビールス性、
アレルギー性がある。
下痢と便秘が交互にくる 過敏性大腸症候群、自律神経のみだれ、腫瘍の場合もある。
お尻の拭き方から診察まで
人はなぜお尻を拭くようになったのか?人は立つことにより、お尻の筋肉が発達し、
肛門は奥へ引っ込んだため、おしりが汚れるようになった。うんちは刺激性のある化学物質で
皮膚につくと、湿疹、炎症をおこす。痔があるとうまくふけない。拭くには、柔らかい紙(トイレットペーパー)、油性のスプレー(サニーナ)、できればシャワートイレがよい。
参考まで
1:トイレットペーパーの裏表は確かめる。
2:ぬぐうように拭く。次は少し角度を変えて拭く。
3:肛門の力をぬいて、紙を奥へ押しつけて拭く。
4:軽く息み、紙を押しつけ、肛門を少しずつ締めて拭く。
5:一回ごと、どれくらいのうんちがついているか、チラリと見ながら、きれいになるまで拭く。
大便は体の健康状態の大きな便りです。
排便のしくみを理解して、快便を心がけよう
異常な排便の場合は専門医に相談しましょう
痔にならないように気を付けよう
痔・END
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