風神雷神像(三十三間堂)
三十三間堂といえば千体の観音様というイメージがありますが、実はそれ以外の仏像が全て国宝で、とても見応えがあります。特に拝観順路の最初に位置し、こちらを見おろしている雷神はリアルで力強く、素晴らしい像です。最後に位置する風神も本当に木で造られているのかと思うほど立体的です。それらの間にならぶ二十八部衆もそれぞれ変化に富んでいてとてもかっこいい像です。そしていつまでもお顔を眺めていたい気持ちにさせられるのがお堂の中央におられる千手観音坐像で、非常に美しく、運慶の子である湛慶が82歳に完成させた鎌倉時代の名作とされています。これら三十三間堂の仏像はゆっくりと見る価値がありますので、修学旅行生がいない梅雨時に行かれることをお勧めします。
阿修羅像(興福寺)
超有名な仏像で、2009年春に東京国立博物館で開催された国宝阿修羅展では2ヶ月間で約95万人が訪れたようです。興福寺の国宝館では八部衆のうちの一体としてガラス越しに会うことができますが、通常では正面のお顔しかしっかりと見ることができません。唇をかんだりすぼめたりしている左右のお顔は興福寺のホームページで見ることができます。少年のようでもあり、女性のようでもある、奈良時代の名作です。他に国宝館では5mの高さがある千手観音菩薩立像も印象に残ります。また北円堂にある運慶作の無著菩薩像は本物の人間かと思うほど写実的な鎌倉時代の仏像で、肖像彫刻の最高傑作とされています。
如意輪観世音菩薩半跏像(中宮寺)
スフィンクス、モナリザとともに世界の三大微笑像と言われている飛鳥時代の傑作で、聖徳太子が母のために建立したとされている中宮寺の御本尊です。かわいい髪型の女性らしい仏像で、何か思案しているような表情と仕草が印象的です。国宝ですがわりと近くでゆっくり拝めます。中宮寺は法隆寺夢殿のすぐ裏手にありますので、法隆寺に行かれた際にはぜひ訪れてください。
大日如来坐像(西明寺)
紅葉で有名な湖東三山のうち最も北に位置する西明寺。国宝である三重塔は内部の壁画なども全て国宝であり、中央に座っておられるのがこの仏像です。金色に輝く輪状の光背とまっすぐ前を見ておられる眼が印象的な美しい仏像です。壁画もそうですが、鎌倉時代の作とは思えないほど色彩が残っており、保存状態が良いことに驚かされます。
十一面観音菩薩像(聖林寺)
聖林寺は長谷寺から談山神社に向かう途中にありますが、立ち寄る人が少ないのでとてもゆっくり拝めます。この十一面観音菩薩像は天平時代の名作で第一回指定の国宝です。右手の指先のやさしい表情や体型の美しさで有名です。観音堂は本堂から奥に階段を上って行くのですが、ガラスの向こうに立っておられるとはいえ、寺の人さえおられないのでこちらが心配になります。いつも次の参拝者が上がってくるまでながめています
文殊師利菩薩像(安倍文殊院)
この仏像も一度見たら忘れられません。鎌倉時代、快慶の作で高さ7mの木造です。獅子にまたがったそのお姿は凛々しいの一言につきます。拝観の前にまず別室で抹茶とお菓子が出され、その後に仏像の前で丁寧に説明していただけます。安倍文殊院は陰陽師の安倍晴明公が出た寺としても有名です。秋にはコスモス迷路、冬にはジャンボ花絵も楽しめます。
雲中供養菩薩像(平等院)
世界遺産に登録されている平等院。鳳凰堂の美しさはよく知られるところですが、その内部に安置されている御本尊の阿弥陀如来坐像を取り囲むように配置されているのが、52体の雲中供養菩薩像であります。とても珍しい壁掛けタイプの仏像で、全て雲の上に乗っており、楽器などを持っている像もあり、様々な姿勢や表情をしています。平等院の国宝を管理する鳳翔館ではこのうち数体を近くでゆっくりと見ることができます。
伎芸天像(秋篠寺)
芸の神様としてアーチスト達から慕われている仏像です。日本では唯一の伎芸天像です。ふくよかな体型とゆったりとした身のこなし、やさしい肩のライン、凛としたお顔で、非常に美しくいつまでも眺めていたい気持ちになります。頭部は天平時代の作で、体部は破損し鎌倉時代に木で造られたとのことですが、全く違和感がなくすごい技術だと感じます。秋篠寺そのものも静かできれいな所ですので、ゆったりと落ち着いた気分になります。
降三世明王像(東寺)
弘法大師空海によって造られた講堂内の立体曼荼羅。向かって左側には五大明王がおられ、日本最古の不動明王像を四体の明王が囲んでいます。五体とも平安時代に造られた国宝で、そのうち右手前で凄まじい怒りの形相で臨戦態勢におられるのが降三世明王(ごうざんぜみょうおう)です。顔が4つで腕が8本、左足ではヒンズー教の最高神であるシヴァ神を踏み、右足ではその妃パールヴァティーを踏みつけています。また胸の前で小指を絡めて手をクロスさせ両手の人差し指を立てる、独特の降三世印を結んでいます。かっこいい仏像であるとともに、神を踏みつけている仏像としてとてもインパクトがあります。
夢違観音像(法隆寺)
悪い夢を良い夢に変えてくれる観音様として親しまれている飛鳥時代の国宝です。法隆寺の大宝蔵院に入ると入り口中央でまず最初に出迎えてくれる仏像です。やさしいお顔と独特な髪飾り、柔らかい肩のラインが印象に残ります。金堂に安置された釈迦三尊像やそれを守護する四天王像が明らかに大陸の影響を受けた四角ばった外観なのに対し、この像は丸みを帯びており、飛鳥時代に造られたのが信じられないほど均整のとれた美しい観音様です。ガラス越しですがとても近くで前後左右から何度も拝みました。その後、悪い夢を見た記憶が無いように思います。