○●○  心やさしい冷血動物  ○●○
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::::>>*ヘビが愛されない理由 *<<::::

どこへいっても歓迎されない、嫌われもののヘビ。女性雑誌ではヘビの写真をほんの小さく載せただけでも、苦情が殺到、売れ行きが下がるのだとか。 胴が長くて手足ないという身体的な特徴が苦手という方が多いようです。

しかし他の動物とは異なり、四肢の存在をいっさい放棄し、独自の進化を遂げたヘビの容姿は、シンプルかつ機能的。ヘビが水面をすべるように静かに進む姿は、他にたとえようがないほど美しいものです。 全てを兼ね備えた究極のフォルムとも言えるのではないでしょうか。


:::>>* あたたかい心を持った冷血動物 *<<:::

ヘビは冷血動物ですが、見かけによらずとても愛情の深い生き物です。獣医師のNさんから、たいへん心に残るヘビの話しを聞かせて頂きました。 Nさんは小学校5年生のとき、東京からI県にひっこしました。今でこそ活発な女性ですが、当時はその土地の方言になかなか馴染めず家の犬や猫が唯一の友達だったそう。 ある日小学校の遠足で、Nさんらが海岸を散策したときのこと。大きなヘビと小さなヘビの2匹が岩陰で休んでいたそうです。

級友たちは、いいおもちゃを見つけたかのように、あっという間にヘビを取り囲み、いっせい石を投げつけました。石がヘビに命中するたびに子どもたちの間から、わっと歓声があがります。血を流しながら、岩を登り逃げようとする2匹のヘビ。よけいに面白がり、夢中になって石をぶつける級友。大きなヘビは、傷は負ったものの、子どもたちの投げる石が届かない岩のてっぺんに、なんとか逃げきりました。小さいヘビは、大きなヘビを追って岩を登ろうとしていましたが大きいヘビほど早く岩を登ることができず、子どもたちから激しい攻撃を受け、とうとう地面に落ちてしまいました。テレビのヒーローの台詞を叫びながら、子ども達は、足元に転がり落ちてきた無抵抗なヘビに、木の枝や石で思い思いの「制裁」を加えます。

Nさんは集団心理で、すっかり目の色が変わってしまった級友たちが心の底から恐ろしくなり、誰にも聞こえないような小さな声で「ヘビが死んじゃうからやめて」と、呟くことしかできなかったといいます。すると、子どもたちの目の前にもう一匹、ヘビが現れました。逃げてしまったはずの大きなヘビが、岩から降りてきたのです。大きなヘビは、小さなヘビの横に丸くなり、そのまま2匹ともまったく動かなくなってしまったそうです。石をぶつけられ、枝で叩かれ続ける哀れな小さなヘビに気づき、助けることはできないけれど、せめてそばにいてやりたい、最期の時を一緒に過ごしたい、とでも思ったのでしょうか。子どもとはいつの時代にも残酷なものです。

先生から号令がかかると、子ども達はなにごともなかったかのように、その場から立ち去ったといいます。 大きなヘビと小さなヘビは夫婦だったのでしょうか。それとも大きなヘビがお母さんで、小さなヘビが子どもだったのかも知れません。私もヘビが道路で2匹、間隔を置かずに道路際で轢かれているのを見たことが私もあります。 いつも、不気味だ、気持ちわるい、と、蔑まれ続けるヘビ。しかしこんな話しを聞くと、人間のほうがよほど「つめたい」生き物ではないかと思ってしまうこともしばしあります。わたしたちは、もっと自然や動物から多くを学ばなくてはいけないと思います。