旅へのこだわり

 初めて旅に出たのは何歳の時だったろうか?
 阿蘇の山奥から熊本市内まで友達と二人で自転車で行ったのは13才の時。行きは下り坂ばかりでいたって楽だったが、帰りは急な登り坂の連続。列車でさえもスイッチバックで登る立野の峠は自分の体力では太刀打ちできず、ほとんど歩いて夜までかかってやっと自宅にたどり着いた。
それにも懲りず、今度はテントとシュラフを自転車に積んでやまなみハイウェイの終着点城山展望所を越えて、何にも無い野原で寒い一夜を過ごしただけの小さな旅。朝日と共に眼下に広がる雲海を見たときの感動。

 高校生活最後の年明けに、友達とバイクにまたがり南紀を一周。この時も、峠道でタイヤがパンクして、夕食も食べられずやっとの思いで宿までたどり着いた。冷え切った身体の震えが止まらず宿帳の記入も満足に出来なかった。

 大学に入ると、気の合った友達と自動車で観光地を尋ね巡った。それなりに楽しい旅では有ったが、自分の求めている何かが足りず、今度はソロツーリングを試みた。
見知らぬ地に1人で行く不安、マシントラブルや事故遭遇の不安を抱きながも無事自宅に帰り着いたときの達成感。旅先で知り合う旅仲間や、親切にしてもらった地元の人々。
 単なる観光地巡りでは得られない、私が旅に求めていたものを確かに得ることが出来た。
 それからは夢中でツーリングを続け、10年が過ぎる頃には沖縄から北海道に至るまで日本中を走破していた。
季節を変えて2度目を巡り始めたとき、まだ何か足りないものがあるように感じられ、もっと自由な旅を求めて、四輪駆動車の後部席に簡易ベットを装備し、キャンプをしながら林道や温泉を巡る旅を数年続けた。
しかし、自分の成長と共に旅への思いも次第に変化しおり、まだ物足りなさを感じる。

 まとめてもらった会社の休日に、思いきって日本を飛び出してみた。初めて遭遇した異文化に新鮮な驚きと感動を覚えた。狭い日本を幾らくまなく巡っても所詮は井の中の蛙。この事に何故もっと早く気が付かなかったのだろうか?
異国の旅は私の旅の終着点。しかし、異国の旅はまだ始まったばかりの旅の出発点。
 文化の違い、宗教の違い、言葉の違い、常識と非常識、知れば知るほど世界の広さが見えてくる。