Japanese English
50 years with motorcycles.


オートバイ。雨に濡れても風に吹かれても、我が最良の相棒。
エンジンの音も振動も排気ガスのかおりも素敵な乗り物です。
大きなヤツはもちろん、小さなヤツも、魅力がいっぱいです。
夏の熱気の中では、アスファルトの照り返しにあえぎながら。
切り裂くような冬の寒さの中は、マフラーで手を温めながら。
風を切りながら走るオートバイの魅力は、語り尽くせません。


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2024 台湾 (高雄・日月潭・台中・九份・台北)
      GP125      

 高雄(カオシュン)をバイクで行く。大きなオートバイじゃないけどへっちゃらさ。「機関」と書かれたバイク専用のレーン、単車の存在を尊重してくれる自動車の運転手たち。いずれも台湾の人たちがバイクを大切に考えていることがよく分かる。だって台湾の人たちは自分も自分の大切な家族も、みんなバイクで走るから。だから女性やお年寄りでも安心してバイクで走ることができる。操縦も上手。おばあちゃんだって、リーンウィズで軽快なスピードでカーブをぬけていく。可憐な女性のスクーターの足元に大人しく鎮座したワンちゃんが憎らしい。手入れされた綺麗なバイクが素敵。
 ここは台湾。バイクが活き活きとその市民権を得ている素敵な国。日月潭、台中、九份、野柳、台北。どこの街でも、人々が優しい。見知らぬおばあちゃんが日本語を話しながら道をいっしょに探してくれる。列車に乗り込む人たちが順番を守って列にならぶ。走っちゃいけない自動車専用道に、年老いた日本人夫婦のバイクが迷い込んだって、笑顔で許してくれる。こんな素敵な人たちの街をバイクで走らないとするなら、もったいない。

 

 エジプト・ルクソールの街、イスラム装束の男たちがバイクで行く。ヒゲの濃い男たちの3人乗りは迫力満点。女性ライダーがいないのが淋しい。バイクの楽しさは男女同じだよ。 古い日本製バイクに酷似した中国製が街中に溢れる。150ccのゴールドウイングなんて名前のバイクも走っている。後席のステップは3・4人乗りもOKの立派なやつ。ステッカーの漢字が逆さまに貼ってあるのがにくい。
 よし僕らも走るぞ!おっとこのオートバイ、クラッチレバーが半分折れて、なくなってるぞ。うわ、前ブレーキが故障してるよ。「大丈夫、後ろブレーキがあるから」と販売業者。ヘルメット着用率は限りなくゼロ、バックミラーも装着率ゼロ。ライトなしで走るバイク群、夜後から追い越されるのが恐ろしい。我らの乗るタクシーにドカンとバスが追突、運転手たちの大声の喧嘩が始まった。
 ここはエジプト。車はとりあえず右側を走るがそれ以外はかなり無法地帯。現金をよこせと要求する輩があらゆる場面で登場する夕日の素敵なこの街、バイクを楽しむ余裕まで到達するのは、至難の業。

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 2024 エジプト(カイロ、ルクソール) 
豪江 Haojiang 150

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2024 フィリピン (マニラ・セブ)
       HONDA ADV150      

 マニラの交差点、赤い信号機に停止する。車の前方に割って入ったオートバイの数が、あっという間に10台ほどになった。信号機の傍らには青に変わるまでのカウントダウンが大きく表示されている。おお、さらに割り込むオートバイの数が増えた。10秒前、まさにモトクロスのスタートはこんな状況か。いや、オートバイの多くは二人乗り、否、3人4人子供を含めば5人乗りもスタートラインに並ぶ。3、2、1・・・ 一斉にエンジンが唸る。交差点からオートバイが散らされたように走りだす。排気量が150cc程の優しい性能のオートバイ、その中で漂って走るぶんには、外から見るほど壮絶な感じはしない。むしろ、道の真ん中で幾重にも重なって止まっているジープニーと、平然とそれに乗り降りしているお客さんにぶつからないように走るほうに気を使う。信号のない交差点など遠慮したら最後、正面衝突かという勢いで反対車線の車がなだれ込む。
 ここはフィリピン、砂ぼこりと排気ガスにむせながら町の中を走ることがとてつもなく楽しい。オートバイは、こうでなくちゃ。

 

 ヘアピンカーブが交互に無数に重なった道、大量の大型オートバイが高速でコーナーになだれ込む。それはあたかも砂時計のくびれに砂が落ち込んでいくように。そしてそのオートバイの隙間を狙って自転車がはさまり込みながら流れ込む。屋根のないカッコいい車達だって負けちゃいない。人ごととして見ている分には実に美しい。ただ、自分もその中に身を置くとなれば別。
 おお、その動きをかき分けて逆方向に同じようにオートバイと自転車と車がなだれ込んでくる。おいおい、ヘアピンのカーブで、反対側の車線にそんなにハミ出しちゃ危ない‥‥けどはみ出さなきゃ回れない。さらに時折デカいバスまでカーブをさえぎる。
 ここはイタリアのステルビオ峠、夏しか開かれないこの大切なレーシングコース、参加できるのは、ゆっくり走ることを知らない頭のボルトがはずれた無謀な輩だけ。私を含めて。

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 2023 ドイツ~イタリア(ステルヴィオ峠、ドロミテ渓谷) 
HONDA Gold Wing 1800

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2023 西日本縦断
        HONDA VTX 1800      

 訪れる多くの場所で、オートバイに乗る私たち二人の老夫婦はうらやましいと声をかけられ、大変ですねと感心され、危ないから気をつけてと心配される。そう、オートバイは羨ましく感心され、ケガする心配の大きいものである。
 なんでこんなモノで旅をするのか。暑いし寒いし、雨に濡れてむき身で危ない。それでもこいつで行く旅路は全てが異なる。風が雨が、冷たい空気が、そしてガラス越しでない目の前の海が迫り来る山々が、私たちが生きていることを、強烈に知らしめてくる。松の優雅な香りに満ちた唐津。カルストの固く白い香りの風が遊びまわる天狗高原。店先を賑わす柑橘類の甘酸っぱい香り満杯の八幡浜。呼子大橋の強風に緊張し門司港の凄まじい雨に翻弄する。
 なんでこんなもので旅をするのか。こたえは簡単、明日から私たちを待つ日々が尊いものであることをもう一度確かめたいから。オートバイに乗って。

 

 トルコ・イスタンブール。モスクからの急な坂道をオートバイで下る。様々な車の警笛と、ヒトの大声で満ちた町並みが続く。オレンジ色の夕日に染まるモスクも、定まった時刻に競い合うようにあちらからこちらから鳴り響く大きな祈りの音声も、この街になくてはならない大切な名産品。強い視線と共に受ける深い笑みも、ガソリンがなくて困っている私たちをとことん助けてくれようとする言葉も、トルコならではの幸せ。 岸の両側にアジアとヨーロッパが存在し、身動きできないほどの車とバスの間をバイクが縦横に抜ける。どこから出てきたのか人が途絶えない。信号無視?一方通行?何のことだ?自分には用があるのだから、後の渋滞など構うものか、邪魔ならバックさせてよけていけ。我先にと車の先端を流れに差し込まねば、進めない。分け入らなければ、向こう側に渡れない。もちろんクラクション・ブーイングなんて気にしてられない。
 ここはイスタンブール、大きな赤いトルコの旗があらゆる場所になびく街。ちょっと怖くたって、こんな愉快な街を走らないという手はない。オートバイで。

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 2023 トルコ Turkey 
HONDA NC750

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2023 ニュージーランド
       ハーレー Street Glide       

 ニュージーランド、オークランドから50km東。ガードレールのない何キロも続く曲がりくねった海岸線の道路。視界をさえぎるもののない自然と一体化した道路から見下ろす際立つ景色が続く。砂の浮いたようなアスファルトが二輪で走るには随分気になる。アップダウンと大きく傾斜のついた決して広くないカーブを、車たちは時速90キロを越える速さでみんな駆け抜けていく。傾くオートバイからは断崖の下がよく見える。
 オークランドの東に位置するコロマンデロまでの道のりは、空と海と断崖と無造作に生える松と赤い土、そして広大な草原で牧草を食む羊と牛で大賑わい。ここは真冬の日本から飛び込んだ真夏のニュージーランド。道端で停まって水筒の水を飲んでいる東洋人の夫婦に、単車が故障したのかと声をかけてくれる若い男性。オートバイに乗ってこの自然の風に吹かれれば、優しい心を育むものが何であるか、よくわかる。

 

 何もないと歌にあった襟裳岬。なるほど高木はないし人の気配もあまりない。ただ、今ここにある穏やかな空気は、厳しい冬と冬の間のつかの間の夏の静けさであろうことは、あらゆる場所から透けて見える。海に浸かって漁師たちが昆布をとっている。男も女も懸命。波と潮風、そして雪の仕業であろう、容赦なく削り落とされた海岸と内陸へと食い込む断崖。何もないどころか、町の中では目にすることができない美しくまた人の手では御し得ない恐ろしい大自然が、私たちの前にあふれる。
 北海道の空の色が、土の香りが、磯のざわめき止まることのない波の音が、すべて輝いている。こんなに自然が近く感じられるのは、大好きなオートバイに乗っているから。

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 2022 北海道 hokkaido  Honda Gold Wing 1800
 

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2022 四国・九州縦断

Honda VTX 1800
             

 感染症に世界が苦しみ始めて3年目の初夏。私たちのオートバイは四国の背骨地帯をつたいながら剣山の麓を西進しました。四国の尾根の最上端から見おろす周囲の山々の美しさ、目前に満ちる太陽の光と空気のゆらめきで感じる息を飲むような三次元の奥行き。山の表層を覆う笹の葉を波打つように揺らしながら、夏が来るぞ夏が来るぞと大声で伝え聞かせるように吹く風。天狗高原のしんと静まった広大なカルスト地帯も、八幡浜港から見上げる広大なみかん畑も、私たちの国にこれほど息をのむ場所があったのかと、私たちは傍らのベンチにただ座り込むばかりでした。
 肌で受ける風、ひざで感じる木々の影の涼しさ、空から降り落ちてくる雨がもたらす手指のかじかみ。当たり前のことがこれほど特別でうれしいものであることに気づくことができるのは、私たちがオートバイでこんなに大きな旅をしているからです。

 

 CanAm Spider のギヤをいれる。いつもの軽く元気なエンジンの回転音と、これでどうだという加速感、さらには停止した時に足をつく必要のない乗り物のみが誇るぶ厚くクッションの効いたシート。旅への期待は膨らむばかり。カーブで傾かないことにはもう慣れた。スノーモービルみたいなUターンもまた楽しい。たとえどんなに重い荷物を積んだって、たとえどんなに急な坂を前のめりに突っ込んでいったって、力強いバックがあればこりゃ愉快。
 病気の蔓延を阻止する規制がなくなったばかりの沖縄。空港の飲食店もまだ半分以上が閉じたまま、道の駅やペンションの周囲も雑草が目立つ。
 しかし確実に、人の動きが眠りから目覚めようという力に溢れている。もう一度、繁栄の石積みを始めようという意欲が感じられる。太陽もいつもより明るい。
 平和と繁栄と人の笑い声、早く世界中に蔓延すればいい。

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 2022 沖縄 Okinawa
CanAm Spyder RT

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2021 北九州・山陰・山陽

    HONDA VT1800    

 早朝。フェリーから降りれば新下関。ねむそうな太陽の光の下、駅に港に人が集まってくる。ラジオ体操の音に合わせ老若男女が波打つ。レトロとモダンが端正な形で取り入れられた港の建物や橋、桟橋に吹く風までもが私たちにとって新しい。
 関門海峡隧道の入り口で求められた通行料110円。思いがけない現金の支払いにとまどった私たちの単車の後ろにできた長い車の列。枚数の多い釣り銭を受け取るのが申し訳ない。ただ1958年製の隧道は、私たち1958年製の人間には何とも親しみ深い。
秋というのに空気が熱い。いつもの冷たい風に備えて着込んできた革ジャンが少し重い。萩の城下町や日御碕、出雲大社が素敵な松の香りで満たされていて、大山に上がるつづら道の美しい紅葉に差し込む日の光が、秋のそれであると知れるのは、ここまでいっしょに連れ添って来たのが、まさにオートバイであるから。

 

 ホンダ ゴールドウイング。6気筒エンジンが実に痛快。一つ一つの気筒が発する排気音はおとなしいのに、6つの排気管が異なった音を出し、スロットルを大きく開けた時に見事なハーモニーを奏でる。そのハーモニーを聞きたくて、またまた右手をひねる。
 ここでは多くのライダーたちとすれ違う。その度に手を上げ二輪を楽しんでいることを確かめ合う。船の出港のように大きく手を振る奴、じゃあなあばよスタイルの奴、かわいい女子高生バイバイの奴。いずれの輩も北海道では単車乗りは手を振る。
 果樹園を営む家族が道端で蒸かす「ゆできび」が甘い。深いしわの豪快な老人がつぎ入れてくれる大きな丼満杯のキノコ汁、熱い、うまい、具の量がはんぱでない。どうやら「お金をかせぐつもり」がなさそう。みんな日常から解放される場所、ここは夏の北海道。楽しく輝く短いこの地の季節に皆が賛辞を贈る。もっと楽しんでおこうじゃありませんか、長く厳しい冬が来る前に。

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 2021 北海道 Hokkaido
      HONDA Gold Wing 1800

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2020 ドバイ・フジャイラ・アルアイン
Harley Road King
              

 荒涼とした山岳地帯をぬけていくハーレー・ダビッドソン・ロードキング。UAEの山には見事なほど木がない。晴れた空と広く整備された道路がなければ、どこの惑星に降り立ったかと思う様な険しい風景。茂る木々の山々に慣れ親しんだ日本人には、極めて特異な景色が続く。いかに大きなエンジンを積んだ乗り物にまたがっていようと「ここで止まってしまったら」という不安がよぎる。進めど進めど川はない。道路に側溝もない。すべて「雨がふらない」ことに深くつながる。
 アラビア半島には日本車があふれている。むろん他の国の車も走ってはいる。しかし眩しく白いアラブの衣装カンドゥーラを着た自信溢れる男性達は、必ず日本製の磨きこまれた白い大型四輪駆動車で登場する。アラビア半島で最も魅力的なものが、日本製品の「こわれない」ことと痛感する。

 


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2020 ハーレーダビッドソン・クロスボーン

私たちの家の住人に加わったHarley Davidson クロスボーンズ。目の前で伸び縮みするバネむき出しの前輪サスペンション、ひょうきんな動物が頭をあげたようなライト、戦争映画の中で登場する軍用単車の如きサドルシート、曲がりやすいとは決して言えないけれど極めて太くて迫力のあるタイヤ。こいつのレトロな外観には、雰囲気の合うヘルメットやジャンパーが必要です。Vance という人とHines という人が協力して設計した魚の尾っぽみたいなマフラーがくっついていて、エンジンをかけた瞬間から、自己主張を極めた音がします。ボルトをゆるめるにはインチ工具が必要で、旅先の田舎で故障かパンクでもしたら、はたして修理できる工場はあるのでしょうか。ただ、そんな心配はこのオートバイで走り始めた途端にどうでもよくなります。こんなにエキゾチックな内燃機関の乗り物がこの世にあることに万歳。

 訪れるたびにその表情を変え、私たちの期待を裏切ることのない九州。目の前に迫る巨大な廃墟・軍艦島とそれに重なる半世紀も前の人々の声と姿。やがて島原をぬけ辿り着いた息をのむほど美しい海と丘、原城跡。私たちが、その歴史の深さを、静かにゆるやかに味わうには充分すぎるほどの時間でした。 オートバイで通る日本のすべての場所が、にぎわいを心待ちにしていることがわかります。今のような状況のもと、いかに少なくとも、たずね来てくれる訪問者に心をつくすことが、明日の繁栄につながると信じている九州の人たちのがんばりが、心のぬくもりが、伝わってきます。伝染病にどれほど世界中が苦しい状態におとしいれられようと、心おだやかに日々をすごすこの国の人たち。私たちがそれを目の当たりにできるのは、オートバイと共に新しい風を探しているからです。
 2021 北九州 Kyushu north
  HONDA VT1800    

        


          Japanese English
                     

 八郎潟をゆく。この景色は誇らしい。米を主食とする国に生まれて幸せであると感じる。桜と菜の花の植えられた、かすむほど一直線な道の両側の田園地帯をながめれば、米を得るために尽力してきた日本人たちの多くの努力、夢、期待が伝わってくる。
 やがて迷い込んだような白神山地。単車で行くいかなる山道も、私たちはおおよそ経験をしてきたはずである。なのに恐ろしい。携帯電話の電波マークが消えたままの未舗装、ガードレールのほとんどない道。400kgのオートバイでの二人乗りは、実に厳しい。
 ようやく山道をぬけて恐山。なんと寺の庭から火山性の煙がたちのぼっている。来たことがなかった遠い場所、素敵な山々、波、岩陰。季節を変えてまた来てみたいと思う情景は、いつもオートバイと共に風と空気と光を感じた場所ばかり。

 2020 東北地方 Tohoku region
  HONDA VT1800    


          Japanese English
                     

 プラハからポーランドへと続く道。
 カレル橋からいくらも走らぬうち、両手に広がる田園地帯。夏まだ半ばというのに、もはや秋の色合いに染められた広大な畑、畑、畑。路面の凹凸が激しさを増し、突然何キロも続く閑散とした工事中。ポツンと動いている重機、談笑しながらゆっくり鉄筋に針金を巻く作業員、赤茶色の錆の浮いた鉄筋、ねじれた工事中テープ。短距離・集中的工事に慣れている日本人達に、延々と緊張を与え続ける波うち穴だらけの路面。
 でも、それがどうしたというのだ?短い夏を楽しむ数多くのオートバイ達が、必ずすれ違いざまにサインを送る様の、心の通わせかたを見るがいい。高速道路の向こう側からも必ず手を振るスクーターを見るがいい。道を譲るオートバイに必ずハザードランプで礼をしていくトラックを見るがいい。古い単車に誇らしげにまたがる陽気な牧師を見るがいい。革のジャケットで2人乗りを楽しむ私達より十年は先輩の夫婦を見るがいい。背中の曲がった老人達が群れをなして楽しむサイクリング、電動アシスト付きの重厚な造りの自転車を見るがいい。
 みんなが人生を楽しんでいる。この国でオートバイで走っていると、勇気を得る。何回も。

 2019 チェコ・ポーランド   
Yamaha VN980      


          Japanese English
                     

Japanese English

 令和をむかえ、日本中が新しい時代の幕開けに沸いていました。熟成の極みに達した夫婦を乗せたオートバイは、本州の西のはしにたたずむ角島(つのしま)を走っていました。沖縄の島々の景色にも似た雄大な角島大橋に日本の底力を見、水平線から静かに昇る太陽が、人間の力の及ばぬ何か崇高なものの存在を、私たちに強烈に伝えていました。オートバイで駆け抜けるその場所場所の空気のにおいと、木陰をぬける風のつめたさ、海辺に満ちるむせぶような磯のかおり。すべて、私たちがオートバイに乗っているからこそ出会える、自然からの素敵な贈り物でした。
 2019 九州・山陰山陽縦断
  HONDA VT1800

ヤマハNiken(ナイケン)。
 こいつが普通のオートバイとどう違うかを説明する必要がありますか?おっと、上手に合成写真をつくったねと感心しているのは誰ですか?おや、こんな単車はあり得ないだろと笑っているのはあなたですか?信じられない姿で私達を驚かせ怖がらせているこの近未来型オートバイは、すれ違うライダー達の視線の矢でズタズタに攻撃を受けてしまいます。見てください、映画「トランスフォーマー」から飛び出してきたようなこのオートバイのスタイルを。そして、車輪の数はかぞえましたか?そう、3つです。ただ、この三輪車、ふつうの三輪車とはわけがちがう…車体を傾けながらカーブを切るのです。2本の前輪を支えるフォークは平行にずれ、深くするどいカーブでも、経験したことがないほどの安定感です。タイヤの接地面積が2倍になり、ふんばる2つの前輪の広いスタンスが、信じられないような素敵なフィーリングを作りあげているのです。
 ヤマハ・ナイケン。これはセンセーショナルです。

     
2018 ヤマハ・ナイケン   Yamaha Niken   


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ツェルマットが近づくにつれ深さが鋭くなるカーブ、アップダウン、そしてまたカーブ。二人乗りで通りすぎる山々の、三次元的な奥行き。そしてちりばめられたスイスの美しい家々、窓を飾る花の可愛さ。フルカ、グリムゼル、ズステンと峠ですれ違うのは、短い夏を謳歌しようと走るオートバイたち。どこからわいてきたのか、二人乗りも数知れず、熟年夫婦の2台並走も驚くほどの数。日の出と共に響く様々なエンジンの音に、バイク好きの血が騒ぎ、急き立てられるようにヘルメットをかかえ外に出る。日本の1980年代を彷彿とさせる。私たち二人を、全方位360度の視界が包む。頭上の山の頂が、足下の谷底が、そして私達の後を舞う鳥たちが、息つく暇もなしに流れる。この年齢でこんな素敵な経験をさせてくれる Can-Am Spyder RT、実に楽しい三輪車。
     2018 スイス  Switzerland
CanAm Spyder RT

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砂漠。昼の熱い砂の放つ白い光。日没時の朱色に染まる砂の有機的な紋様。そして夜の恐ろしい闇。広大な砂の中を走る道は舗装されたハイウェイなのに緊張する。遠くを歩く野生のラクダがアラビア半島を主張し、ヘルメットのスピーカーを通して聞くインターコムのいつもの同乗者の声も乾く。一年の半分以上を30度以上で過ごし、夏は50度にも達する国、アラブ首長国連邦(UAE)。この国の人達にとって、外気にさらされてオートバイで走ることなど、馬鹿げた趣味、あえてする気の起こらぬことか。それでもみんな、オートバイに跨る私たちに笑顔で手を振ってくれる。私達も手をふる。駐車場で小さな子供がアラビア語で話しかけてくる。若い人達がいっしょに写真を撮らせてとやってくる。
 それにしても、この国ではハイウェイの周りの景色がなかなか流れない。Honda Gold Wing 1800、こんなにデカいのに小さい。
HONDA Gold Wing 1800
2018 アラブ首長国連邦(UAE) Jabel Hafeet

霧にむせぶ夜明け前のアブダビ。ギラギラと容赦なく照りつける太陽の光だけがこの地の素顔ではないことを、モスクを覆う白い霧が誇らしげに主張していました。目覚めたばかりの少し不機嫌そうなハーレーのエンジン音は、白い空気を切り裂いて進んでいきました。その時。白いベールにつつまれていたモスクが、王宮が、そして高層ビル群が突如現れ始めました。それは舞台の幕開けとともに登場したスター達の様に、颯爽と悠然と。車も人もいない8車線の道路が演出する現実離れした風景。道行く男性の真白い、そして女性の深く黒い妖艶な光沢をもつイスラムの装束。そして、モスクに響く息をのむような祈りの声。オートバイと共に経験するこの瞬間に、心から感謝せずにはいられません。
     2018 アラブ首長国連邦 Abu-Dhabi

      Harley Davidson Softail

Japanese English

Japanese English

シャワーの如き激しい雨かと思えば、夏の爽快な青空、そしてまた雨。天気の変化を楽しむに英国は最適。革ジャンの下にダウンジャケットを着込み、真冬に近い装備で駆け抜けるウェールズの丘陵の秋のような景色。そんな冬支度の日本人達の前で、元気に海水浴を楽しむ子供達。主張が控えめになったハーレーの新型ミルウォーキー8エンジンの排気音と出力は、ジェントルな英国の風景に極めてよく馴染んでいました。
 この瞬間を、この場所で、この空気の中で感じることができる幸せは、共にやって来たものがオートバイであったからこそ、深く胸に響きわたるのでした。

     
2017 イギリス・ウェールズ
      ハーレー・ダビッドソン ロードキング

Can-am スパイダー F3 Limited。
 この蜘蛛は、止まっても足で支える必要はありません。下り坂、きびしく方向を変えながらフルブレーキしてもこけません。低くかまえたスタイルは素敵で、非日常を100%演出するのにもってこいの乗り物、パワーも抜群です。ただ、カーブを曲がる時、傾きません。三輪車だから。
 前輪が2つ左右に張り出したこのF1マシンのような形の乗り物、バックができます。だから駐車場での後退は、笑顔、笑顔、注目の的。小さな子は手を振り、丁寧に「写真を撮らせて下さい」とやって来た勇気ある小学生に「どうぞ運転席に座って」。どんなに荷物を積んでもへっちゃら。おもしろい、やめられない。ただ、傾きません。

     2017 沖縄
CanAm Spyder F3

Japanese English


Japanese English
Harley Davidson Softail

砂漠の中の高速道路を進む、ハーレー・ダビッドソン SOFTAIL。
 太陽をさえぎる木々も岩陰もない文字通り砂漠の中を、熱い空気を吸っては吐き、人が息をするように地面を駆って走る私達のオートバイの排気音は、機械とは呼べない命を宿した生物の呼吸のようでした。植物とは無縁の岩と砂ばかりの恐ろしい表情の山々、砂ぼこりけむる地平線、赤い夕陽に息をのむような妖しい陰影を映しだす見渡す限りの砂。街に響くイスラムの祈りの声は、ドバイの街角を行く私達の髄に届くほど深く響き、男性の白い、女性の艶やかな黒い衣装が、アラビア半島の文化を誇らしげに伝えていました。
 オートバイで行くイスラムの町は、長い時間をかけて磨きこまれた宗教の重みと、それを心の拠りどころとして生きる人々の優しさにあふれていました。

          
2017 アラブ首長国連邦

Japanese English

冷たい朝の透明な空気に立ちのぼる別府の温泉蒸気は、バイク乗りたちにとって旅の開始の狼煙(のろし)でした。 眼前にする巌流島が、壇ノ浦が、平戸の商館が、時の流れと歴史の深みを伝え、人で溢れる博多どんたくの踊り手たちが、九州の人たちの勢いを知らしめ、雄大に横たわる阿蘇の涅槃像が、和の心のありかをさとしているようでした。足場と幕に覆われた熊本城の姿とその周りに集った多くの支援者達に、日本の底力を感じる瞬間でした。
 オートバイたちを迎える初夏の九州は、遠い昔に外国との貿易で栄えた町の端正なたたずまいと、それをとりまく自然の美しさ、さらには穏やかで優しい人達で魅力的に演出されていました。

 
2017 九州HONDA VTX1800

Japanese English

40年も前、親友と小さな渡し船にオートバイをのせてたどりついた瀬戸内の島々は、素敵なつり橋でつなぎとめられていました。しまなみ海道をいく人達は、単車も車も自転車も、秋のぬけるような青空を背に輝いていました。自転車を連ねて笑顔で走る外国人の家族に日本人として誇りを感じる瞬間でした。耕三寺(こうさんじ)の色彩と、大山祇(おおやまづみ)神社の押し黙ったような鎧(よろい)、白滝山の五百羅漢、小豆島・寒霞渓(かんかけい)の紅葉。限りなく価値が高く、鮮やかで印象的な場所に私たちを連れてきたものは、やはりオートバイでした。
   2017 しまなみ海道・小豆島
   
HONDA VTX1800

Japanese English

 大きな旅を覚悟しつつオートバイで走り始めた初夏の日、真新しい自動車道は、またたく間に私たちを天橋立に立たせていました。地元の方の親切な勧めでオートバイと共に上った成相寺(なりあいじ)の、自然の静寂に囲まれた人のいない高台から見る砂州に心奪われ、持参したポットの熱々のコーヒーがその景観の価値を無制限に高めていました。この光溢れる光景を、香りを、そして風を感じさせてくれる場所に私たちを導いてくれるもの、それがオートバイでした。
   2017天橋立・大阪心斎橋

   HONDA VTX1800

Japanese English

 上海の町の中を埋め尽くす電動バイク。朝の出勤も主婦のお買い物も、巨大な荷物を乗せるリアカーを引くのも電動バイク。数十年走っていたであろうと想像できる人力車までがモーターで走る。ほとんど無音で走るこの乗り物が、徒歩の私たちの背後から近づいてくると、得体の知れぬ一種の恐怖を覚える。大きなピストンが往復して中でガソリンを爆発させて走るオートバイが勇ましくもあり、騒々しくもあり、また古典的でコミカルな乗り物にも映る。「走る時に音がする乗り物」。もしかすると、間もなくそんなものがこの世から消え去ってしまうのかもしれない。蒸気機関車が電車にかわった時も、きっとこんな淋しい思いをした人がいたに違いない。
   2017 中国・上海

Japanese English

 鬱蒼とした林の中の九十九(つづら)折りを、私たちのオートバイは天城峠へ向けて進みました。敢えて舗装せず残された、あの歌のままの道。
  舞い上がり 揺れ墜ちる
  肩のむこうに あなた 山が燃える

 光さえぎられた林道の、冷えた岩陰でエンジンを止めた時の静寂は、喧騒に慣れた私たちの心を洗い緊張させるに十分な神秘的な力に満ちていました。南伊豆の小さな漁港から出て行く船の航跡が映す赤い夕日、海の向こうに悠然とたたずむ富士の姿、入り江を埋め尽くす松の葉の香り。
 オートバイと共に感じる風は、刻々と表情を変える自然と私たちが限りなく一つの空間に存在していることを、長い時間をかけて、優しいやり方で、伝え続けていました。

          
 2016 伊豆・富士

Japanese English
Harley Davidson Ultra Limited

 ハーレーダビッドソン Electra Glide。
 素敵な旅の途中であることを繰り返し主張するトランク、唸るような排気音、郊外を高速で突き進む時の鼓動。性能という言葉だけでは表せないこのオートバイの味は、さらに深みを増していました。何十キロもブレーキをふまず、何時間もギアチェンジをせずに走る大自然の中、機械を人間が信頼し一体であることが、極めて嬉しく感じられました。息をもつかせず次々と目の前に現れては流れていくカナディアンロッキーの大きさが私たちの命を洗い、限りなく深い奥行きをもつ山々の姿とその放つ光は、この空間に存在できることを崇高なものに感謝させる力を秘めていました。オートバイの傍らで「どうだい?」と声をかけてくれるカナダの人たちの気さくさ、対向する単車がピースサインを必ず投げかけてくれる仲間としての暖かさ。大切なものを再認識する瞬間の連続でした。
        2016 カナダ 

Japanese English

 フェリーボートを降りたホンダVTX1800。
 待っていたのは、眩しい輝きを放つ九州の空と海でした。稲佐山から見る長崎湾、併走する路面電車から投げられる優しい長崎の人たちの視線、
新緑の開聞岳の裾野の長閑な小道でエンジンを止めた時の静寂。いずれも私達の期待通りの魅力に満ちていました。空を行く鳥も、風になびく芋畑の葉さえも、二輪車で旅をする私達に手を振っているようでした。オートバイがかき分けながら進む三次元の空間が、心沸き立つ数々の表情に次々と変化してゆく時間でした。

           2016 九州 

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 ハーレー・ウルトラクラシックFLH。ヨーロッパの石畳も路面電車の軌道でも、極めて安定した走りで乗員を守る巨艦です。エンジンの始動は儀式の如く神聖で、大きなピストンが動いているぞと、全身を震わせて表現する様が、ライダーの心拍数を上げずにおきません。少なからず腕力を要する取り回しもUターンも、パワーを後輪にかけ続けてブレーキで抑えれば、不思議なほど安定する乗り物です。ザルツブルグのガソリンスタンドで、またインスブルックの駐車場で、老夫婦が、また小さな子を抱いた父親が、買い物帰りの女性が、そしてバスの運転手さんまでが、日の丸を肩につけた夫婦に温かい声をかけてくれました。オートバイが旅を輝かせた数々の瞬間でした。

 2015 ドイツ・オーストリア 
       Harley Davidson Ultra Classic


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 奥飛騨・銚子の滝は、色づく木々のざわめきを巻き込むように蕩々と流れ落ちていました。V-twinのエンジン音をもかき消すような水音が、残されたようにたたずむ私たちを包み、夕刻の闇に覆われ始めた木々の間から、森の精たちがみんなしてこっちの方をみているような気がしてならない空間でした。雨が降っているのか滝の水がいたずらに戯れているのかさえ解らないほどの周期で、森の秋が、色が、空気が、音が、私たちの体を通り抜けていきました。私たちを正気に返らせてくれた愛車のいつもの熱い咆哮に、素晴らしい瞬間がまさに今なのであることを知るひとときでした。

       2015 奥飛騨

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高速道路の高架橋から望む広島の美しい都会の景色は、日本のもつ底力を感じさせる光を放っていました。ミュージアム展示用に縮小されてもまだ勇姿と呼ぶに相応しい戦艦大和に、先人達の大きな思い入れを感じずにはいられませんでした。すすきの揺れる秋吉台のワインディング・ロード、三佛寺の投げ入れ堂に続く山道、新しい舗装で誇らしげに私たちを迎えてくれる山陰道。日本中の道が、大型の単車を駆るライダーを、余裕をもって出迎えてくれるようになりました。いつまでも走りたい、風を感じていたい、光を追い続けたい。そんな思いにさせてくれるものがオートバイです。
 2015 山陰・山陽

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 B+com(ビーコム)、Bluetoothを使った無線通話装置。ヘルメットに装着したスピーカーとマイクで、バイクの乗員同士やグループで走る仲間同士、双方向に同時に会話ができます。クリアーなデジタル音声は、周囲の騒音によって自動的に音量がかわり、少しの充電で1日中会話が楽しめます。3系統あるチャンネルは電話、音楽もボタン一つで変更可能で、最近これにカーナビの音声が重ねて聞けるようになりました。免許の必要なアマチュア無線機器を操作して会話のキャッチボールを続けたアナログ時代をよく知る世代にとっては、隔世の感がある道具です。オートバイの前に広がる光を、風を、そして時を共有するための、有意義な機器です。


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ソニー・アクションカム。マッチ箱ほどに縮められたビデオカメラで、疾走するライダーの視線を、そのまま記録してしまう極めて優れた機器です。日本製の高い画像処理能力を駆使、腕のモニターでの録画のON/OFFを行える、進化した操作性の魅力的なアイテムです。画像処理のすごさは、日本の光学技術の集大成であるに違いなく、振動だらけの二輪車でも全く揺れない抜群の画像には、ただ驚くばかりです。アルプスの雄大な山々、ドナウ川沿いの光あふれる景色、そして豪雨のロマンティック街道。駆け抜けた森の木々の香りまでも思い出させるような、胸躍る感覚までも記録してくれます。
 老いてオートバイに乗ることができなくなったら、
仲間と酒を飲みながら、記録した映像を大きな画面で見るのが楽しみです

     2015 大雨のドイツ


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ハーレー・ダビッドソン・ウルトラクラシック。音響装置やオートクルーズに加え、上質なシートやトランクが、大きな荷物を満載して出かける旅に、限りない楽しみを沸き上がらせてくれる単車です。出力や加速の能力を主張せず、ワインディング・ロードを行く乗員たちに、二輪車特有のコーナリングの楽しさを、ダイナミックに、しかも安定して与えてくれるオートバイです。人生を、時を、二人で共有していることを深く味わうのに、最高のアイテムの一つと言わざるをえません。

 2015 周山街道
   Harley Davidson Ultra Classic

 ハーレー・ダビッドソンSoftail. 低回転から強烈に発生するトルクは、ライダーに限りない安心感を与え、荷物満載の二人乗りでも後ろブレーキとアクセルだけで、かんたんにUターンしてくれる実に素晴らしいスタビリティの単車です。馬力や燃費、メカニズムの云々を語る前に、単車が胸を熱くする乗り物であること、二輪で走る不安定な乗り物がどうやったら安定するのかを、長い歴史が解き明かしてきたことを実感できる、きわめて魅力的な、アメリカ製の単車です。

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  2015 北海道・雄阿寒岳
         Harley Davidson Softail

 


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 上矢作の山道も恵那の里も、鮮やかな桜の花たちの宴たけなわでした。待ちに待って春を迎えた鳥たちが、激しく流れ落ちる喉の滝の水飛沫に戯れていました。風が吹くたびに舞う、阿木川湖の桜の花びらが、この宴の終わりが近いことを伝え、それを見つめる訪問者たちは、過ぎ去ろうとする春を惜しむばかりでした。山のすべての木々が芽吹き、ほんの少し前まで山じゅうを黙らせていた冬は、もはやどこにもいませんでした。すれ違いざまに交わす単車乗りたちの合図や視線が、この上なく嬉しく感じられる瞬間でした。
   
2015上矢作・明知・喉の滝


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 奥飛騨・銚子の滝へと続く、秋の細い山道は、楓やもみじの鮮やかな色で敷きつめられていました。滝の音に合わせて雪のように降る落ち葉が、この時この場所に立つことができた幸せな訪問者たちを、静かに歓迎してくれていました。山々のすべての生き物たちが、厳しい冬の到来にそなえようとせわしく動き、風にゆれる木々の葉音すら「冬だ、冬だ」と私たちに呼びかけているようでした。誰もいない山道にこだまする V-twin の熱いエンジン音に、命を感じる瞬間でした。

  2014 奥飛騨・銚子の滝・平湯大滝

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2014 フランス パリ・モンサンミッシェル
Harley Davidson Softail
              

 ハーレー・ダビッドソンSoftail。
1600cc空冷2気筒エンジンのトルクの太さは相変わらず秀逸で、極めて低回転から大きな力を発揮してくれました。4気筒や6気筒のエンジンの音をジェット機と形容するなら、このハーレーの2気筒エンジンの音は、まさにヘリコプターのそれで、信号機のないパリ郊外の道を高いギアでアクセルを意識的に開けた時、大きな咆哮をあげながら突きすすむ様は、痛快の一言でした。どうして世界中に多くのファンがいるのかよく理解できる、米国製オートバイでした。

 Mont Saint Michel version
Paris/Chartres version


2014 新富士紀行 version   名港大橋 version
   ホンダVTX-1800。
2気筒で1800ccをカバーする、極めて楽しい鼓動感のオートバイです。長い長いホイールベースが、最高の直進性を生み出し、低い重心を幅広いハンドルで自在に操る感覚が、実に痛快な二輪車です。二人乗りを得意とし、何百kmもの距離を余裕に満ちて走りきる高いバランス。長い1日の走行の後でもライダーに「もっと乗っていたい」と思わせる胸熱のモンスターです。

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 ハーレーダビッドソン、ロードキング。
咆吼にも似た排気音、柔らかいシート、太いトルク。止まっている時には大きく震えているのに、走りだせば実にスムーズ。賑やかなエンジンの機械音も、気温によってキレ味の変化する、ワイヤー式のクラッチも、ニュートラル位置の探しにくいギアも、すべて「それがどうした」という気分にさせてしまう、魅力満載の単車でした。信号機で止まるたびにピョンピョン伸びたり縮んだりする柔らかな前輪サスペンションが、郊外のハイウェイでは極上のソファーのような乗り心地を提供する様は、造りこんだ技術者の主張を目の当たりにするようでした。世界中のオートバイメーカーが、この単車の乗り味に似せたものを、どうして造り出すのかよく理解できるバイクでした。

    2014 オーストラリア・シドニー

          Harley Davidson Road King
 
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  単車に乗った怪しい一味。

 不敵な笑みを浮かべながら集まった、怪しいイエローシャツの男たち。彼らの名前はエキゾーステッド・ライダーズ(疲れた単車乗り)。
 いつもは優しいおじさんたち。しかしヘルメットと革手袋を装着するやいなや、彼らの表情がキラリと変わる。彼らはオートバイで走る。時として灼熱のアスファルトの上を。また時としてジャケットに雪をはり付けながら。彼らは走る。大好きなオートバイで走る。
 バイクで疾走する彼らを、行く先々で待つのは、度数の高いショッカーたち。硬軟を使い分けた様々な攻撃を容赦なく彼らにしかける。しかし、エキゾーステッド・ライダー達に敗北はない。高らかな笑い声とともに、軽い舌鼓をうちながら、ショッカーたちを飲み込んでいく。軽々と、しかも大量に。

せせらぎ街道  遠州街道

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2013 能登半島(輪島・珠洲・千里浜)
  約20年ぶりに訪れた能登半島。千里浜は小さくなっても、その美しさは昔のままでした。驚くほど快適な自動車道が、輪島や珠洲まで整備され、冬の雪支度を始める金沢の庭園も、日本海を見下ろす千枚田も、海を眺める和倉の温泉街も、現代の旅人達の嗜好にそった、洗練された風情を漂わせていました。オートバイで旅することは、素敵な瞬間を次々とつなぎ合わせる事にほかなりません。
HONDA Pan European

  

2012 信楽
 ヤマハ・ドラッグスター400。乗りやすいシートの高さ、とりまわしのしやすさは、女性でも気負うことなく乗ることができる、小粋なオートバイでした。2気筒エンジンの鼓動が、木の葉の舞う秋の舗装路をとても素敵な映画のシーンに変え、ヤマハのオートバイ特有の美しい造形美が、操縦するライダーにこの上ない満足感を伝えるものでした。1日のツーリングを終えて、エンジンを切ることがもったいないという感覚にさせる、まさに味のある、秀逸な単車でした。
Yamaha DrugStar 400

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Kawasaki VN1700
 カワサキVN1700 Classic Tourer。
ドイツ古城街道を走り抜けるのに心地よい、振動が程よく残されたスムーズなエンジン、さらに低速でもクセのないハンドリングは、日本製の証でした。前後のライダーが大きな自由度をもって足を置くことができるステップボードも、長い旅には最高の装備でした。使いやすいサドルバッグ、大きなシートの後席、背もたれ、そして何よりもエンジンやタンデムバー、バッグの造形美は、日本人の端正な感覚が織り込まれている、最高のものでした。所有したくなる逸品のひとつです。

2013 ドイツ 
フランクフルト・ローテンブルグ

 Gold Wing が、軽くスタイリッシュに変身したF6B。太陽の光を誇らしげに反射する赤いこの機械は、1800ccものエンジンを抱えているにもかかわらず、低い重心と強固な骨格を武器にライダーの意のままに右に左に体を傾けながら峠道を駆け抜ける、スーパーマシンでした。シートやカウリング、シルエットまでもシェイプアップされ、「ちょい悪オヤジ」が乗るのに似合いそうな、魅力的なオートバイです。
HONDA Gold Wing 1800
 

 2013 周山街道

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  ハーレーダビッドソンの旗艦
FLH-R、ロードキング。
1700ccの2気筒エンジンは、1つ1つの燃料の爆発をライダーに丁寧に伝え、スロットルを開けた時よりも閉じた時のエンジンの息づかいが、まるで生物の背中にまたがって乗っているような感覚にさせるオートバイでした。「機械」、「モノ」という言葉で表すことのできな
い、造り込んだ人たちの思い入れと歴史を感じさせる単車でした。


 2013 高野山

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 ホンダ Gold Wing。
圧倒されるような姿と巨体。「重くて乗りにくいオートバイだろう」という先入観は、走り始めて間もなく消え、これを作り上げた日本の技術者に喝采をおくりたくなるほど、素晴らしいバイクでした。驚くほどの粘りと力のあるエンジン、低重心、セルモーターによる後退システム、いずれも世界中で賞賛されているとおりの、完璧なオートバイでした。


     
2013 横浜、鎌倉

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 フランスの南部山岳地帯を走り回ったドゥカッティのモンスター696。2気筒の乾いた排気音は、町と町をつなぐ長い街道に魅力的にこだまし、延々と続く信号機のないワインディングロードは、いつまで走っていてもライダーを飽きさせることはありませんでした。目に鮮やかなイタリアンレッドのおてんば娘は、日本製のしとやかなマシンに慣れた身には少々荒々しいバイクでした。
 2012 フランス 
    ニース・マルセイユ
   


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 長い距離を快適に巡航するための大きなカウルがついた、ホンダPan European STX-1300。電動で上下するスクリーンの後ろのライダーは少々の雨ならばモロともせず、大量の熱を発する1300ccV型4気筒エンジンは、二人乗りをも快適に演出し、1日に走る距離を大幅に増やしました。高速道路の二人乗りが可能になり、ブルートゥースの機器が、乗車中の音楽や携帯電話、同乗者やツーリング仲間との双方向同時会話を可能にしました。画期的な時代を駆け抜けたマシーンでした。
  2002~ ホンダ
       パン・ヨーロピアン
  Tandem ride
Suzuka pass


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ドキッとするほどグラマラスなヤマハV-MAX。水冷のV型4気筒・1200ccのエンジンは140馬力を超える出力を誇り、その排気音も乗り心地も全く素晴らしいオートバイでした。ガレージにたたずむその姿の美しさは、高速での不安定感を払拭するにあまりあるものでした。調整不要のシャフトドライブの信頼を初めて知ったモンスターマシン、15年近くも一緒に旅を続けた愛機でした。
1988~ 
  ヤマハ・V-Max
  月ヶ瀬・五月橋  

1985 志賀高原・富士山 CB250RS
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 セルモーターがなく、エンジンの始動には必ず行わねばならない「キックスタート」が女性には大変な単気筒のオートバイ、CB250。ワインディング・ロードにこだまする特有の軽い排気音は、今でも稀に道ですれ違うときに必ずふりかえってしまうほど特徴のある音でした。アマチュア無線機の交信用のスイッチをON-OFFしながらの走行が、雨降りの道や冬の寒さを紛らわせてくれ、スポークホイールが優しいイメージを醸し出しているオートバイでした。
 

 社会人になったら、乗れないとタカをくくっていたオートバイ。でもそれはうれしい誤算でした。手にしたCBX750はカウルのついた形のいい単車でした。無線機で交信しながら走る楽しみを知った愛機でした。皮ツナギのライダースーツに身を包み、日本中を走り回ることが最高に楽しい日々でした。日本中にオートバイ好きが溢れ、休日には老若男女が思い思いの服装で、風を切って走り回る時代でした。カウルの中の3連メーターが、今までの単車のイメージから大きく変わる1台でした。   
1983~
Honda CBX750F
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 学生のうちにと、バイトを重ねて親友と二人でそろえて買ったCB750K。DOHC4気筒の4本マフラーは、今でも写真を目にするとわくわくします。朝3時に待ち合わせをして、まだ途切れ途切れであった高速道路を、日光や秋吉台まで走りました。雨も冬も気にせず、一緒に走った単車でした。ツーリングから帰って来て、タンクを撫でながら安全に走ってくれてありがとうと単車に言うようになったのは、この頃からでした。母が喜んで後ろに乗ってくれた、エンジンの造形の美しいオートバイでした。   1980~
Honda CB750K

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 ホンダ・ダックス50。大学周辺の自転車での行動範囲を飛躍的に広げようと、バイトを重ねて新車で買った、クラッチ付きのかわいいバイクでした。アメリカンバイクのようなシートの形やハンドルの形がとても楽しい、おもちゃ箱から出てきた「小さな宝物」のような単車でした。時速30kmで走ることがこんなに素敵であるということを知らせてくれた、粋なやつでした。   1979~ Honda Dax
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 高校を卒業して、初めて乗った中型二輪、ホークⅡ400。トルクの力強さが忘れられないほどインパクトがありました。スポークとリムのホイールが当たり前の時代の中、初めて目にする5角形の鉄製のホイールは新鮮でした。400ccの排気量で40馬力、ヤカンの形に似たタンクと、ブーっと湿った排気音がちょっと変な、かわいい愛機でした。漫画の影響か、今でも暴走族風の若いお兄さん達が好んで二人乗りをしているのに出くわすと、機械としての耐久性が極めて高かったのであろうとうれしくなります。
  1977~
Honda Hawk Ⅱ


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 高校2年の時、両親が乗ることを許してくれたホンダCB125。町は今ほど交通量が多くなかったとはいえ、オートバイがあぶない乗り物であることにちがいはありませんでした。「速度をだすな」の一言だけで、息子を信用してくれた父親。2気筒・4サイクルのエンジンは、力があるとは言えませんでしたが、景色を楽しみながら走るということを堪能させてくれる愛機でした。   1975~
CB125T

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